「そこまでやるか!?」韓国ソウルの衝撃のEV政策
EVといえば、欧米や中国を思い浮かべる人が多いでしょう。
そんな中で、最近、存在感を増しつつあるのが韓国。
韓国メーカーのヒョンデは、世界的にも人気のEV を作っていて、日本にも再上陸しています。
国内でのEV普及も、新車販売の約1割がEVと、日本の一歩先を行っている韓国ですが、
中でも、普及が先行しているのがソウル。
そこで実行されているのは、日本ではなかなか考えられないような政策でした。
ソウルのEV普及目標
まず、ソウル政府は、2035年までに新車の内燃機関の自動車登録禁止 を目指しています。
つまり、欧州などと同様に、ソウルでは、2035年以降、新車のガソリン車等は販売しない方針です。
日本よりもEV普及でやや先行する韓国ですが、2035年の脱ガソリン車を実現するのは、一筋縄ではいきません。
野心的な目標を実現するために必要な、大胆な政策パッケージを進めています。
5分圏内に充電器を!充電ネットワーク戦略
ガソリンスタンドの代わりに、充電器で充電する電気自動車。
充電スタンドにアクセスできるか や 自宅で充電できるか 次第で、EVの利便性は大きく変わります。
ソウル市は、EV用の充電器の普及を徹底的に進めていて、
2026年までに「利用者生活圏5分充電ネットワーク」を構築していくことを目指しています。
実際に、EV1台あたり、約0.8基の充電器がある と言われるほど充電器の普及は進んでいて、
ちなみに、世界平均や日本ではEV1台あたり約0.1基(充電器1基あたりEVが10台)なので、尋常ではない充電器の普及率だと分かるでしょう。
日本には数個しかない、公道上で駐車しながら充電できるEV充電器も(上の画像)、ソウル市だけで約200個普及しています。
現在でもEV充電器は多いですが、2025年までに、さらに現在の約4倍の 20万基 を目指しています。
充電器に「住所」を設定?
充電器がたくさんあっても、利用者が簡単にアクセスできなければ、宝の持ち腐れ。
そこでソウル市は、市内の急速充電器1800か所に「住所」を割り振りし、統一的に把握しやすいようにしています。
各充電器には上の写真のような看板を掲げている他、
民間のアプリに充電器の番号や位置情報を提供し、アプリ上でEV充電器をチェックできるようにしています。
なお、「充電器が見つけにくい」という問題は日本にもあり、gogoEVのような民間サイトやアプリが、充電器を検索できるようにしていますが、
ソウル市のような官民連携での取り組みは珍しいでしょう。
EV充電器がやってくる!?
EV充電器の位置が分かっていても、充電器をなかなか使えない人々がいます。
というのは、充電器のバリアフリー化は、日本でも韓国でもほとんど進んでおらず、
充電器を操作するパネルが車椅子では届かない位置にあったり、充電器の周辺に段差があったりすることもしばしばだからです。
ガソリンスタンド以上に無人で運営されていることの多いEV充電器では、人の手を借りることが難しく、問題はより深刻化です。
そこで、ソウル市が実証実験しているのが、「電気の宅配便」というべき試み。
トラック型のEV充電器で充電をしたい人のもとに向かうことで、EVを充電するという試みです。
現在、身体障碍者向けに実証実験を行っているとのこと。
EV充電器が少ない充電空白地帯の解消にもつながりうる試みなので、今後の動向が注目ですね。
安めの車、低所得者、若者に集中支援。ソウル独自の補助金
最近、韓国では、段階的にEV補助金を削減していてます。
ソウル市もそれに合わせて、削減を進めていますが、
メーカーによる値下げを促す ような形で、補助金削減を進めています。
具体的には、車両価格5,500万ウォン未満のEVであれば、最大840万ウォン(韓国690万、ソウル市150万)、
5,500万ウォン以上8,500万ウォン未満の車両は最大補助金の50%がありますが、8,500万ウォン以上の車両は補助金支援対象から除外される仕組みです。
つまり、安いEVほど集中的に補助金を投入 するということ。
さらに、低所得者層にEVを手ごろにするための工夫は他にもあり、
上流層より低い階層の人のEV購入は、国の補助金の20%を追加支援し、
若者(34歳以下)の初めての購入者に対しては10%を加え、合計30%を追加支援するとのこと。
日本の補助金制度では、格差等を意識していた工夫はまずないので(若者への購入支援が福井県にあるのみ)、見習うべきなのかもしれません。
ディーゼル車は立ち入り禁止!? グリーン交通ゾーン
実は、ソウルには、燃費の悪い車が入れない場所があります。
場所は、かつて漢陽都城という城壁に囲まれていた半径2~3キロのソウルの中心市街です(日本で言えば新宿区に相当するのでしょうか?)
そこに入る道路にはカメラが設置されていて、等級5の燃費の悪い車が入ると、
データベースと照合、車の持ち主を特定し、違反を通知、罰金を課します。
要は、速度違反を取り締まるオービス と同じような仕組みです。
狙いは、中心市街地の混雑緩和と、CO2などの排出量の削減。
現在は、20年落ちのディーゼル車などが含まれる等級5の車が罰金の対象ですが、より最近のディーゼル車を含む等級4の車も、2025年からは、罰金の対象になる予定です。
さらに、グリーン交通ゾーンの外も含めたソウル全土でも、随時規制を強化し、
2025年に等級5の自動車の運行を制限、2030年までに等級4の自動車の運行を制限する予定です。
いずれは、EV以外がソウル市に入ると罰金の対象になるのでしょうか......?
まとめ
ソウルでは、EVを普及させるため、徹底的な充電インフラ整備で、EV充電器のアクセスを向上しつつ、
格差を考慮した独自のEV購入補助金で、EV購入を促しています。
今後の普及や政策がどうなるか注目ですね。
日本のEV政策については以下を参照してください。