【ブログ】実はコロンビアに行ってきました
10月末の一週間、実は私はコロンビアのカリにいました。
縁あって、生物多様性の国際会議COP16に東京大学からのDelegatesの一人として派遣されていたためです。
COP16の感想や学んだことはたくさんあり、それはおいおい別のブログとしてまとめますが、
この記事ではコロンビアの交通事情、EV事情を中心に自分が見てきたことをまとめます。
新車EV率は日本より高いコロンビアだが.......
実はコロンビアは、「ある意味では」日本以上にEVが普及している国でもあります。
世界各国のEV普及データをまとめたIEAのGlobal EV Data Explorer によると、
2023年の日本の新車に占めるEVの割合は3.6%ですが、コロンビアは3.9%です。
基本的にEV普及率は先進国>>>新興国・途上国なので、これは驚くべきことでしょう。
「どんな秘訣があるんだろうか」と思って現地に来たのですが.......
そもそも、街中にEVをあまりみませんでした。
というのは、先ほどの数字はあくまで「新車EV率」。
街中を走る車のEV率ではないからです(この統計は新興国・途上国では実はなかなか入手できません)。
新車が多い日本に比べて、中南米諸国では明らかに年季の入った車が多く
新車のEV率が多少高くても「すぐには」EVが増えないのでしょう。
それでも、日産リーフ、BYD Atto3、KIAのEV3らしき車が走っているのは見ましたし、会場とカリ市中心を結ぶバスもBYDでした。
また、COPのグリーンゾーン(一般向けのイベント)にも、自動車メーカーとしては唯一(?)BYDかその関連業者が出展していました。
確かにEV普及は気候変動問題の緩和を通じて生物多様性を守ることにも繋がる一方で
レアメタルの採掘の生物多様性のインパクトもゼロではないので、ここに出展するのはどうなのって気もしますが、環境意識の高まっているうちにどんどん売る魂胆なのでしょう。
BYDの展示車や宣伝はショッピングモールなどで日本以上に目にしたので、中南米にも中華EVの攻勢があるのは実感しました。
もっと重要なのは「大気汚染」?
それと同時に痛感したのが、コロンビアのような場所に生きる人々にとっては、
EVは気候変動対策よりも大気汚染対策としてのメリットが実感されるだろうということです。
マイカー比率も先進国ほどは高くないので、街中をよくバスやトラックが走っているのですが、
この環境性能がとにかく悪く、明らかに黒い煙を出しながら走っていました。
自分の世代は(2000年生まれ)、物心ついたときには強力なディーゼル車規制がある世代なので、
ここまで大気汚染物質をまき散らす車をあまり見たことがなかったので、話には聞いていても衝撃でした。
特に現地の人はバイクが多いので、その煙をダイレクトに吸うことになるので健康への影響は甚大でしょう。
この大気汚染問題は日本のようにディーゼル車の排ガス規制が進むことで緩和されていくかもしれませんが、
そもそも排ガスを出さないEVによって、かえる飛び的に解決されるかもしれません。
少なくとも電気バスに関しては「体感では」日本より普及しているので、その兆候はあると思いました。
鉄道の代わりとしてのバス
そういえば、カリ市の交通の全体像をまだ話していなかったですね。
街中に走っているのは、自家用車は比較的少なく、タクシーも多く、二輪車やバスが多い印象でした。自家用車の中にもライドシェアが多く含まれることも考えると純粋な個人の車は少ないのでしょう。
それでもラッシュの時間帯は相当混雑していて、クラクションが鳴り響く感じです。
バスに関しては、ほぼ鉄道(路面電車)のような位置づけであり、日本人が駅っぽいものを見たらそれはバス停です。
また一部区間ではバスレーンもあり、コンクリート舗装(初期費用が高いが耐久性があり重い車が通る道路に向いている)されていました。
日本よりもバスの地位が高いことが分かるでしょう。
日本もコンパクトシティ化を進めていくためには公共交通の再活性化が必要です。また、環境問題を考える上でもマイカーの利用を減らすことは重要です。
このようなバスのためのインフラ作りは有効かもしれません。
コロンビアの人にとっての環境問題とは?
「生活に手いっぱいな途上国の人には、環境問題対策などにやる気はないだろう」というナラティブが流布することがあります。
「彼らは環境にやさしい製品のための上乗せ価格を払いにくい」という意味では正しいのでしょうが(そうでなければもう少しクリーンなトラックを買っているでしょう)、
ことコロンビアに関しては、やはり実態と乖離しているように思えます。
UNDPの世論調査でも、コロンビアは「昨年よりも気候変動の心配をするようになった」と答えた人の割合が75%と世界9位で、
「自国が自然を保護・回復することを望む人の割合」や「政府に気候変動対策の強化を求める人々の割合」でも世界有数です。
また、コロンビアの政治家のスピーチを聞くこともありましたが、
コロンビアの自然の豊かさを国の誇りに結びつけるような語り方をしていたのが印象的でした。
現在の仕組みでは自然保護が金融市場的には非効率であっても、アイデンティティ上の意義をはじめとした多様な価値を自然に見出すことである程度維持しようとしているのが現状なのかもしれません。
もっとも自分はスペイン語がしゃべれず挨拶すら危ういので、現地の普通の人々(英語が話せるコロンビア人はとても少ない)に話を聞くことができず、本当のところは分かりませんが。
まとめ
中南米諸国に行く機会なんてほとんどないので、実際に現地の交通事情を見れてとても有意義でした(もちろんCOP自体も学びが多いので、後でまとめて共有します)
現在の交通事情・大気汚染事情はあまり良くはないということを再認識しつつ、
それが逆説的にEV普及への支持に繋がる可能性も実感しました。
また、バスの地位に関しては言えば、正直日本はコロンビアに負けている面も多いので、ここは日本が追いついてほしいところですね。