日本のEV普及率は東アジアで最低かもしれない

日本が先進国のなかで最もEVが普及していない国なのはご存じでしょう。
とはいえ、いわゆる「先進国」は地理的には「欧米」に集中しています。
では、東アジアの新興国を含めた場合にはどうなのでしょうか?
結論から言えば、これは東南アジア諸国を含めて考えても、
「まともなデータがある国の中では」日本より新車EV率が低い国はありません。
この記事は各国のEV普及率をまとめます。
伸び悩みする日本のEV普及率
2024年時点での日本の新車EV率は2.8%。
新車乗用車100台のうちのわずか3台がEVという計算 (なお、街を走っている車の中では100台に1台程度)
世界平均の新車EV率が22%なことを考えても、これは非常に低い数値なのは間違いありません。

また日本では、バイク・軽自動車・輸入車のEV率が高いことが特徴です。
最近では、ボルボのEX30など欧州車人気EVがある他、今まで泡沫的な地位だったテスラ・BYDなどのEV専業メーカーも少しずつ台頭しつつありますが、
国産メーカーの普通乗用車のEV率が低いことがネックになっています。
圧倒的な中国のEV普及率
一方、世界の新車EV率を押し上げているのが中国です。
新車販売におけるEV比率はすでに50%に迫る勢いで、世界で最も急速にEV化が進む国の一つ。
さらに、BYDに代表されるような価格競争力の高いEVを世界中に輸出しており、世界全体のEV化を駆動する存在になっています。
日本市場や北米市場では存在感は薄いですが(北米市場では超高関税で抑制されている)、
その他の市場では、もはや中国車が目立たないEV市場はまずありません。
これは日本の貿易収支的には苦しい展開でしょうが、世界の環境問題のことを考えれば、プラス面がやや大きい流れでしょう。
というのは、新興国の経済発展で世界の自家用車がどんどん増えるのはほぼ確実。
それが全てガソリン車なら世界の温室効果ガス排出はどんどん増えてしまうようからです。
もちろん、EVを走らせるための電気が石炭火力由来だとガソリン車より環境負荷が高くなりますが、
それは再生可能エネルギーさえ劇的に普及すれば解決する問題ではあります。
もちろんそれも難しいのですが、
これまで石炭火力に大きく依存してきた中国でさえ、電力の半分程度を再生可能エネルギーで賄っている現状を踏まえると「一縷の望み」はあるというわけです。
地味に高い韓国のEV普及率
実はエネルギー問題で日本と同じような問題を抱える韓国も、実はEV普及率は日本より数倍高い状態をキープしています。
日本と同等の人口密度があり、石炭火力と原発に依存し、再生可能エネルギー導入量は少ない(ただし、洋上風力のポテンシャルだけはある)という意味で、
日本と韓国はエネルギー問題では非常に近い立場なのですが、ことEV普及に関しては異なる立場にあります。
2024年には新車販売に占めるEVの割合が10%近くに達しているのです。
また、現代自動車のEVも、中国やテスラには及びませんが、一定の国際競争力を持っています。
ASEAN主要国の躍進
東南アジア諸国でもEVの普及が急速に進んでいます。
もちろん、中古車を含む町の中を走るEVの数はまだ少ないですが、新車に占めるEV率を見ると、日本を圧倒する普及率の国も多いです。
ベトナムのEV普及
東南アジアの中で今最も勢いがあるのが、ベトナムでしょう。
ベトナムでは2024年には新車に占めるEV率が17%に達しており、5台に一台がEV。
これだけでも欧州のEV普及と同等なのですが、2025年も急速に伸び、中国を猛追しています。
ベトナムのEVメーカーであるVinfastの台頭や、国のEV普及政策がこの背景にあるとされます。
タイのEV普及
日本車の牙城であるタイでもEV普及が急速に進んでいます。
2024年には新車に占めるEV率が13%に到達。
減税や補助金などの政策と、中国メーカーのEVの台頭で普及が進んでいます。
インドネシアのEV普及
インドネシアは、タイやベトナムに比べると見劣りしますが、それでも日本より数倍高い新車EV率を実現しています。
2024年に新車EV率は7.3%です。
2023年には2.2%だったので急速に普及率が上昇した形です。
付加価値税(消費税に相当)や輸入税などをEVに限り減免する政策で需要が喚起された形です。
マレーシアのEV普及
マレーシアの新車EV率は3.6%です。
比較的低い普及率ではあるものの、日本のEV率を上回っています。
シンガポールのEV普及率
また、他の東南アジア諸国とは一線を画す経済力があるシンガポールでもEV普及は進んでいます。
2024年には新車の三台に一台がEVでした。
狭い島国のシンガポールでは自動車の数を抑制するため、自動車のナンバープレートの発行を抑制しているのですが(香港など中国の都市でも同様の政策があります)、
それがEVの場合には緩和されるなどの優遇措置が強力に普及を促している形です。
その他の国は最新のEV普及率の把握すら困難
ここで、個別に紹介しなかった国もいくつかあります。
台湾、カンボジア、ラオス、ブルネイ、北朝鮮、ミャンマーなどです。
何も自分に都合が悪いからこれらの国を排除したわけではありません。
これらの国は、国際エネルギー機関(IEA)にEV普及の統計を提供していないため、
最新のEV普及状況を把握することすら困難なのです。
そもそも、内戦中のミャンマーなどは国土全体のEV普及率など把握しているわけがありません。
逆に言えば、それ以外の国、
つまり、EV普及率をIEAに報告できる東アジアの国の中では、日本は新車EV率が最低だ、ということです。
まとめ
「日本のEV普及率は欧米先進国に負けている」というのはもはやミスリーディングであり、
「日本はEV普及率は新興国の中でも低水準」という現状があります。
これは自動車の輸入で儲けている日本にとって、非常に重要な事実であるのは間違いありません。
日系メーカーが今後も競争力を持ち続けるには、EV市場でも一定のシェアを奪うことが欠かせないでしょう。
また、環境政策の観点から言えば、10年後、日本のEV普及率の低さを欧米だけでなく新興国にも批判されないためには、急速に追いつくことが必要でしょう。
ガソリン税の暫定税率廃止などの政策は、この流れに真っ向から逆行することは言うまでもありません。