その日、EV充電器設置は義務になる。東京都の新制度を解説
自宅でのEV充電・外でのEV充電を便利にすることを目指している東京都
EV充電器の設置に手厚い補助金をかけるだけでなく、ある制度も導入予定です。
それが、EV充電器の設置を条件付きで「義務化」する制度。
既に条例化されていて2025年度から開始される予定ですが、
そもそも、どんな制度で、どんな建物が対象なのでしょうか?
分かりやすく解説します。
EV充電設備の義務化制度とは?
EV充電設備の一部義務化は、2022年12年改正された環境確保条例の「建築物環境報告書制度」と「建築物環境計画書制度」に基づくものです。
かの有名な(?)、新築戸建て住宅への太陽光パネル設置原則義務化と同時に決定され、同じ条例に基づいています。
太陽光パネル義務化の方が注目を集めたので知名度は低いですが、東京都のEV充電インフラにとって非常に重要な制度と言えるでしょう。
義務化の対象は?
2025年度以降の新築建物の多くが義務の対象になります。
しかし、建物の種類によって、義務の種類が異なります
例えば、駐車場のある戸建て住宅(一軒家)の場合には、EV充電器を設置する義務はありませんが、EV充電器を設置するのに必要な配線工事は義務になります。
しかし、10台以上の駐車区画を持つ集合住宅(マンション)などの場合は、より義務は厳しくなります。
EV充電器を一台分以上設置し、さらに駐車区画の20%以上のEV充電器用の配線を準備する必要があります。
駐車場を持たない戸建て住宅や、駐車場が少ない建物が対象外になるほか、
・延べ床面積10㎡以下の住宅等
・居室なし又は高い開放性を有する建築物(自動車駐車場等)
・文化財等の原形を再現する建築物
・仮設建築物(材料置き場等)
・島しょ部の住宅等
が例外になります。
義務化の仕組み
誤解されやすい点ですが、義務が課されるのはハウスメーカーやデブロッパー(建物供給事業者)であり、建物に住んだり、建物を使ったりする個人ではありません。
また、小規模の会社(都内において年間に延床面積の合計で2万㎡未満)は制度の対象外になることができます。
義務化された企業は、義務の達成状況など報告書にまとめる必要があり、その結果は都のページで公開される予定です。
なぜ義務化されるのか?
そもそも、なぜ東京都はこのような制度を始めるのでしょうか?
東京都がEVを普及させるつもりだから
そもそもこのような義務化制度は国内では東京都が初ですが、世界的には先例があり、
EV-ready building codeと呼ばれています。意訳すれば、
将来のEVの普及に対応できる建物を目指す規制といったところでしょうか。
実際に、東京都は様々な政策でEV普及を促進しています。
将来EVが普及すれば、もっと多くのEVユーザーが、自宅や外出先など様々な建物でEVを充電したくなります。
その需要に対応できるような充電器を今から整備しておこう、というのが東京都の考えのようです。
義務の対象となる集合住宅等には駐車区画の20%以上のEV充電器用の配線を用意する必要がありますが、
「20%」の根拠は東京都のEV普及目標が達成された場合、2030年のEV保有率が約20%になるから、だそうです。
また、義務化制度でEV充電器を増やすことで、EVの利便性を高め、EVを普及しやすくするという効果も狙っているかもしれません。
新築時がEV充電器設置のチャンスだから
義務化をするもう一つの理由は、新築時はEV充電器を設置するチャンスだからです。
通常EV充電器を設置するには配線工事が必要です。
しかし、初めからEV充電器を設置するつもりで配線を作っておけば、コストは大きく抑えられます。
また、既存の分譲マンションでEV充電器を設置する場合には、管理組合での合意形成が必要で、それがハードルになりがちですが、
はじめから設置してあればそのハードルがなくなります。
もっとも.、既存のマンションに設置する場合も国や東京都の補助金や支援制度はありますが、はじめからEV充電器があれば、補助金による東京都の財政負担が抑えられるというわけです。
まとめ:義務化の影響は?
東京都は一部の新築建物にEV充電器の設置を義務化する予定です。
10年、20年後には「建物にEV充電があるのが当たり前」という状況になるかもしれません。
そうなれば、EVは便利になって普及しやすくなるでしょうし、
逆にEV充電器がない住宅や建物の資産価格は低く評価されてしまうでしょう。
義務化制度は知名度こそ低いですが、将来の東京都のEV社会を形作る政策と言えるかもしれません。
なお、東京都はこれ以外にも多様な政策でEVの普及を促しています。
ぜひ、他の政策もチェックしましょう。