なぜ2023年のEV普及は東京の独走状態だったのか

EVは日本のどこでどのように普及しているのでしょうか?

それを探るため、次世代自動車振興センターの補助金交付データを分析しました。

すると、2023年のEV普及でも、東京が抜きんでていることが明らかになりました。

この記事では、その理由についてまとめます。

2023年のEV普及は東京の「独走状態」

2023年、日本のEV販売台数は11.8万台。

2022年の10.7万台なので、わずかに普及が進んだことが分かります。

しかし、その中身を都道府県ごとに分解してみると、

ほとんどの都道府県でEV販売台数が横ばいである一方で、大都市圏などでは一定の上昇がみられること

中でも、東京都での上昇幅が大きく、日本全体でのEV増分の半分以上が東京に由来することが分かります。

もちろん、東京は人口が多いですが、それでも日本全体の一割程度、車の数で言えば一割以下。

人口の多さを加味してもEV普及率の伸びが大きいのが分かるでしょう。

次世代自動車振興センターのデータより著者作成

実際に、ここ数年、東京でのEV保有率は全国平均の約2倍、全国一位 をキープしており、

自分の計算では、2023年の新車EV率は7%程度で、これはアメリカの新車EV率(9.5%)に肉薄しています。

このように、「2023年のEV普及は東京の独走状態だった」といっても過言ではありません。

では、その理由は何なのでしょうか?

理由1.軽自動車の少なさ

2023年に、地方でEV普及があまり伸びなかった原因は、サクラ(軽EV)の需要が一巡したことが考えられるでしょう。

日産サクラ | NISSAN MOTOR CO., LTD. | Flickrより引用

サクラは2022年に発売されて以来、日本のEVとしては異例の勢いで売れてきました

最近のEVとしてはバッテリー容量(航続距離)は小さめですが、日常で遠出をせず、自宅でEV充電をできる人にとっては、十分実用に足るコスパの良いEVだったからです。

地方では特に人気で、半導体不足も相まって、生産が追い付かない事態になるほどでした。

しかし、2023年になると人気はある程度の水準で落ち着き(それでも日本で一番売れているEVです)

また、23年には、サクラに対抗するような軽EVを日産以外のメーカーが出すこともなかったので、地方での新車EV率の伸びは鈍化することになりました。

一方、東京都では、そもそも軽自動車が普及していないので、サクラによる影響を受けにくかったと考えられます。

2024年には、商用も兼ねた軽EVとして、ホンダのN-VANの電気自動車が発売開始。さらに、コスパに優れたBYDが地方に進出しているので、地方でのEV普及が再加速する可能性はあります。

理由2.政策の手厚さ

また、東京都は、EV政策が日本一手厚い地域でもあります。

国の補助金に匹敵する東京都独自の補助金があるだけでなく、充電器の普及も強力に推進しています。

東京都はEV普及に年数十億円の予算を注ぎ込んでいるので、23年のEV普及もその成果が順当に出ていると考えられます。

政策の詳細は、以下の記事を見てください。

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理由3.「外車」へのアクセス

世界のEV普及率は、日本のEV普及率を大きく上回っています。

必然的に、外車に占めるEV比率は、日本メーカーのEV比率を上回ることになります。

そのため、海外メーカーのディーラーが立地するなど、外車にアクセスしやすい地域では、そうでない地域よりEVが普及しやすくなるでしょう。

特に、ここ数年で日本に進出した、中国メーカーBYDや、韓国ヒョンデのコスパは圧倒的。

ただ、アフターサービスが不安な人も多いでしょうから、ディーラーや整備拠点にアクセスしやすい場所の方が、これらのEVを購入しやすいかもしれません。

ただし、BYDに関しては、現在、急速にディーラーを増やしているので、近いうちに、アクセスの地域差は無視できるものになるかもしれません。

まとめ

今回は47都道府県のEV販売データの変化をまとめました。

改めて、日本のEV普及において、東京が圧倒的な地位にあることを明らかにしました。

東京都の手厚いEV政策により、これからも東京都のEV普及は進んでいくでしょうが(これだけ予算をかけて普及しなければ血税を払っている都民がかわいそうです)、

車種のラインナップの変化やBYDの進出等とともに、地方にもEVが波及する可能性は十分にあります。

また、47都道府県のEV政策については、こちらを参照してください。

自治体のEV政策

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