イラン攻撃でEV普及はどうなる?

中東情勢が急激に悪化するとまず心配になるのが
「ガソリン、また高くなるの?」「そもそも石油が来なくなる?」ということ。
この記事では実際のところ、どうなりそうなのか?
そして、それが電気自動車普及にどう影響しそうなのか?を整理します
ホルムズ海峡の通行が困難に
ホルムズ海峡は、ペルシャ湾から外洋へ出る際の出入り口。
イラン以外も含めた中東各国からの石油が通る場所です。

米EIA(米エネルギー情報局)によると、
世界で海上輸送される石油の1/4、LNG(液化天然ガス)の約5分の1が通過します。
イラン国土と近い海峡であるため、イランがドローンや地対艦ミサイルでタンカーを攻撃すれば、ひとたまりもありません。
実際に攻撃がほとんど行われなくても、攻撃される際の経済リスクを民間企業は無視できず、
事態が沈静化するか、アメリカ政府などがリスクを取らない限り(艦隊が護衛をつける等)がなければ、
ここを通った石油・天然ガスの輸出入は実質的には不可能になりました。
イランが隣国の石油関連施設も標的にすることもあるので、海峡の安全だけがある程度確保された状態でも、その脅威が落ち着かない限り、石油の供給は絞られます。
日本で石油はなくならない、当面は。
そして、日本が輸入している石油の大半はこの海峡から輸入しています。
普通に考えると、石油の国内備蓄が切り崩すことになるでしょう。(→緊迫する中東情勢 高市首相言及、「254日分」の石油備蓄とは?)
「一年も持たないではないか」と思うかもしれませんが、実は別の備えもあります。
それがかの有名な、国際エネルギー機関(IEA)です。
今でこそエネルギーに関する様々な研究をしている国際機関ですが、本来はオイルショックなどに対応すするための組織。
深刻な危機が訪れたときには、各国で協力して石油を市場に供出することが決まっています(Oil security and emergency response - About - IEA)
つまり、外国が備蓄していた石油、危機に対応するために増産した石油も日本が買うことができるわけです。
もっとも、油質の異なる世界の石油を調達し、加工することは困難を極めるでしょうし、
アメリカがこの手の国際的な義務を一切放り投げてしまったらもうお手上げなのですが(トランプ政権ならギリギリやりかねないのが怖いところ)
一方、同等の備えは天然ガスにはありません。
中東からの輸入は1~2割ほどですが、備蓄の量も限られているので、ある意味天然ガスの方が苦しいかもしれません。
それでも石油価格は暴騰する?
また、石油も「完全に買えなくなることがなさそうだ」というだけで、価格自体は暴騰する可能性は高いです。
現に原油先物価格は一時100バレルくらい上がりましたし、LNGに至っては約70%上がる市場もあります(アジアのLNG価格、1日で1.7倍に ウクライナ侵略以来の高値 - 日本経済新聞)
事態が鎮静化しない限り、この価格上昇はいずれ、ガソリン価格・電気価格(天然ガス発電は日本の主力電源!)反映されます。
電気価格への転嫁には一応タイムラグがありますが、夏ごろには負担が大きくなるしょう。
このように石油も電気も上がるので、EVに特別有利な状況になるかはわかりません。
ただ、石油ショックへの備えが脆弱・かつ再生可能エネルギー比率が案外高い東南アジア諸国では、EVシフトが進みやすくなる可能性が高いですし(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM03BXB0T00C26A3000000/)、
個人的な予想としては日本でもEVへのシフトが進みやすくなる方向に傾くとは思いますが。
切ってしまった「ガソリン減税カード」
そして、日本はタイミングが悪いことに、ガソリンの暫定税率を廃止したばかり。
環境性能割も廃止したので、今の政府は、実施しやすい自動車減税をやりつくしてしまったとも言えます。
これ以上の自動車への減税や補助金ももちろん可能ですが、
「暫定」税率の廃止などの立派な建前がない分、海外投資家からすれば、より「バラマキ」に見えやすくなります。
実際、ウクライナ戦争を機に年間兆単位の血税を配るのが常態化してしまったわけです。
それを上回るガソリン代高騰を打ち消そうとしたとき、年間7-8兆円が見えてきます。
ガソリン価格が高騰しているという現実から目を反らすために、文部科学省の予算(約6兆円)を上回る額の血税を投じる。
そんな国に、あなたが投資したいと思うでしょうか?
投資家が財政に不安になると、円安がより進み、さらなる燃料代のさらなる高騰に繋がるかもしれません。

まとめ:「石油ショックの再来」を日本はどう受け止めるか?
石油ショックから半世紀以上経ち、先人たちの対策により、日本が石油を入手できなくなるリスクは大幅に減りました。
しかし、それは化石燃料を平時のように使えることを意味しません。
価格高騰のリスクは依然として大きな問題であり、ウクライナ危機を超えるような価格上昇の可能性は高いです。
もっとも、これは化石燃料を大量に輸入し続ける限り、完全に回避することなどまず不可能な問題ですが。
ガソリン価格が200円を超え、250円を超えたとき、私たちはどうするのでしょうか?
財政悪化を覚悟でガソリン補助金を再開するのか、
電気自動車への移行や燃費規制の強化に賭けるのか。
石油ショックの時代の日本政府が現代にタイムスリップしたとしたら、恐らく後者を選ぶでしょう。
そもそも省エネルギーへの投資、再生可能エネルギーの開発が日本で本格化したのは、石油ショックを受けた後での政府の対応の結果なのですから。
彼らからしてみてば、布団より安いような価格で再生可能エネルギーが買える、
少し手を伸ばせば燃費の良い車・電気自動車が変える今の時代は、非常に恵まれているように見えるはずです。
日本政府がどのような道を選ぶかによって、今年がEV化が爆発的に進む年か、単に財政を悪化させた年になるかが決まるといっても過言ではないかもしれません。

