タクシーはEV化できるか?補助金制度は意外に充実【最新版】

NISSAN MOTER CO, LTD. より引用
2011年の先駆的なEVタクシー導入

EV(電気自動車)が普及しつつあるのは、マイカーだけではありません。

バスやタクシーなども少しずつEVが増えています。

しかし、その補助金制度は、マイカー対象のものよりも複雑

そこでこの記事では、国や自治体のタクシーのEV化に関係する補助金を解説します。

そもそもタクシーをEV化するメリットは?

そもそも、タクシーでEVを使う際のメリットは何でしょうか?

メリット1. ランニングコストの削減

EVはLPGの代わりに電気で走ります。

ケースバイケースですが電気代の方が安、燃料代を抑えられます。

また、オイル交換などは不要であり、修理コストが下がるメリットや、税の減免措置もあります。

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これが意外に馬鹿にならず、EVの初期費用の高さを相殺できることも

ある実証実験では、セダン式の従来タクシーと比べて、1台あたり6年間で約370万円に相当する節約ができたそうです。

メリット2. 走りやすさの向上?

EVとガソリン車は似ていますが、走りにはいくつか違いがあります。

  1. EVはエンジンがない分、静かで振動が少ない
  2. また、エンジンに比べて加速が早く、坂道が多いとEVの方が運転しやすい場合もあります
  3. 運転アシスト機能とも相性が良く、同等のガソリン車に比べて運転アシスト機能は充実しています

これらの特徴は、顧客や企業よりも「運転手にとってのメリット」ですが、運転手不足の中では決して無視できない要素かもしれません。

なお、EVのデメリットとして挙げられやすい「航続距離の短さ」ですが、

通常のLPGタクシーの航続距離が短く、EVの航続距離と同等なため、それ自体は問題になりにくいでしょう。

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メリット3. 環境性能

また、EVはガソリン車に比べて温室効果ガスの排出量が低いという特徴があります。

今の日本でタクシーを呼ぶ際にEVをわざわざ選ぶような人はいないでしょうから、直接利益には繋がらないかもしれませんが、

環境問題への貢献を地域社会や投資家にアピールしたり、行政と連携したりする際には、有効かもしれません。

当然デメリットもある

当然メリットばかりではなく、デメリットもあります。

  1. 充電はLPG充填に比べて時間がかかるため、充電に配慮する必要がある
  2. タクシーに向いた車種のラインナップはまだ充実していない
  3. 車の価格が高く、初期費用がかかってしまう

このうち、

1番目の充電の課題は、事業所に充電器を設置することで緩和できます(後述)。

2番目のラインナップの課題は、少しずつ改善しつつあります。

3番目の価格の課題は、補助金を利用することで大きく緩和できます。

では、その補助金制度はどのようなものがあるのでしょうか?

国の補助金はどの程度か?

国は、マイカーのEV化を促すためにCEV補助金を用意していますが、

中古車の場合や商用車の場合には、CEV補助金は利用できません

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その代わりに、環境省などが JATAを通じて、別の補助金の枠を用意しています。

それが「商用車の電動化促進事業(タクシー・バス)」。

EVやPHV、FCVを購入する際に補助金を受けとることができます。

環境省資料

気になる補助額は、「車両価格の1/4(税抜き)」が目安。

例えば、日産リーフX(税抜370万)の補助金は92万。プリウスPHV S(308万)の補助金は61万。詳細はこちら

これは、実はマイカーへの補助金よりも手厚い額です。

充電器設置も補助

それだけではありません。

LPG車とは異なり、EVは事業所などで充電器を設置すれば停車中に充電できますが、

そのような充電器設置の際にも補助金を受け取ることができます。

具体的には、設置機器の費用の半分から全額、工事費用の全額が補助されます。

ataj.or.jp/wp-content/user-data/taxibus_r5/doc/2024_apply_guidance.pdf

ただし、補助金の額は上限があったり、消費税分は補助されないなどの限界があるのでご注意ください。

詳しくは、募集要項 を参照ください。

「交通DX・GXによる経営改善支援事業等」への補助金

さらに、国の補助金はこれだけではなく、全く別枠の補助金もあります。

デジタル化・グリーン化。そして、インバウンド対応などを促すための国土交通省の補助金、

令和5年度「交通DX・GXによる経営改善支援事業等」及び「交通サービスインバウンド対応支援事業」です。

公募要領より引用

EVタクシーの導入も書かれていますが、それ以外の補助対象も幅広く、

公共交通全体の活性化を促すような補助金なので、

ぜひ、国土交通省の公募サイトから詳細をご確認ください。

地方自治体の補助金

さらに、地方自治体には独自の補助金があります。

例えば、東京都では最大60万円の補助金を国の補助金と併用する形で使うことができます。

以下の一覧から各都道府県の名前をクリックすると、各県の政策の公式サイトに飛びます。

EVタクシー補助金一覧

市町村ごとの補助金についてはまだ調べ切れていないのと、

ここに書かれていない県にも全く違う補助金の名前でEVタクシーへの補助金がある可能性があるので注意してください。

まとめ

タクシーへのEV普及はまだ進んでいませんが(導入事例の集積はこちら)、

政策を見るとマイカー以上にEVへの支援が手厚いことが分かるでしょう。

ただし、タクシーのEV化政策は、国や自治体のEV政策のごく一部でしかありません。マイカーへの補助金、充電器の普及政策等――。

これからのEV普及がどうなるのか」を考えるためには、これらの政策を知る必要があります。

以下のリンクから、それらの政策をチェックできるので是非ご覧ください。

国のEV政策

国のEV政策について徹底解説。EV補助金から税制優遇、充電器設置補助金まで。

自治体のEV政策

47都道府県EV政策総まとめ EV(電気自動車)を普及させようとしているのは、国だけではありません。 県独自・市町村独自のEV支援策も、EV普及を下支えしています。 そこで…

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