【テスラ VS カナダ】 岐路に立つカナダのEV政策

画像はAI生成

近年、EVが普及している国の一つ、カナダ。

2023年時点で新車の13%がEV。2024年も増加傾向は続き、一見普及は順調そうに見えます。

しかし、最近カナダのEVを巡る状況は、「補助金停止」と「貿易戦争」により様変わりしつつあります。

この記事では、カナダのEV政策を巡る状況について解説します。

カナダのEV政策:ZEV規制

カナダ政府は2050年までの温室効果ガスゼロを目指しており、その達成のために、

2035年までに新車全体をゼロエミッション車(ZEV)にするという目標を掲げています。

ここで重要なのは、これが単なる「目標」ではないこと、

ZEV規制」という形で実効性のあるルールとして機能する予定だということです。

どういうことかというと、

カナダ政府は各自動車メーカーに対してEVなどのZEVを一定割合以上販売することを義務付ける予定なのです。

例えば、2026年モデルでは新車販売の20%以上をZEVで売る義務があります。

逆に言えば、ガソリン車を売るには その1/4の数はEVを売らなければならないということ。

イメージ:AI生成

普通に売っても義務を満たせないメーカーは、赤字覚悟でEVを値引きして売りさばくか、他の会社からクレジットを購入する必要があります。

そして、この数字は毎年高くなっていき、2030年には60%、2035年には100%、つまり全てZEVにすることが計画されています。

このような形で、カナダ政府は、野心的なEV普及を実現しようとしているのです。

見直されるカナダのEV補助金

その一方で、EVに対する補助金は縮小傾向にあります。

2019年から実施されていたEV購入時の連邦補助金制度(iZEV)。

実はこれが2025年初頭に一部停止。今後は、補助金支給対象の見直しや、自由貿易協定を締結している国の製品に限定するなどの措置が検討されています。

もともと、EV補助金は普及の「きっかけ」を作るための措置であり、いつかは削減・縮小される運命にあります。

カナダ政府が補助金を2027年ごろに段階的廃止していくことは既に方針として公開されていました。

しかし、想定外だったのは、国内外の政治が混乱しているこのタイミングで予算切れを起こしてしまったこと。

それがカナダのEV普及に大きな混乱をもたらしています。


駆け込み需要か?不正か?テスラとの対立

問題になったのは、先ほどの補助金の停止間際のテスラの動き。

テスラは停止間際の3日間で、8600件の新車を登録(補助金額にして約43億円

この急増には不正疑惑が浮上、カナダの運輸省が調査を開始するという事態に発展しました。

テスラとカナダ政府の対立は、これだけではありません。

トランプ政権とカナダ政府が対立し、貿易戦争に発展しつつある中で、

カナダ与党の有力議員がテスラ車に100%の関税をかけることを示唆したり、

逆にテスラもカナダでEV全車種を最大16%値上げ しました。

これに重なったのがトランプ政権に与するイーロンマスクへのカナダ国民の反発。

結果的に、テスラの売上は激減し、販売台数がひと月で7割減したそうです。

100%の追加関税で中国とも対立

さらに問題なのはカナダ政府がテスラだけではなく、世界一のEV輸出大国、中国とも対立していることです。

カナダはバイデン政権やEUと歩調を合わせ、

2024年10月1日から中国から輸入されるすべての電気自動車に対して100%の追加関税を課しています。

一方で、中国側はこれを保護主義的だと非難し、報復関税も発動する動きを見せています。

結果的に、カナダ政府は、EV普及に野心的な目標を掲げながら、

テスラと中国勢というEV界の双頭と対立する難しい状況に陥っているのです。


まとめ

カナダは、国内の自動車産業の脱炭素化と競争力強化を狙い、2035年までに新車全体をゼロエミッション車にする目標設定を行い、

2019年から今までEVに手厚い補助金をかけて初期の普及を促してきて成果を出し、今後は補助金を減らしてZEV規制に移行する予定でした。

この戦略自体は真っ当ですが、タイミングが悪く、

中国とアメリカ(特にテスラ)と二正面の貿易戦争に突入しつつあり、カナダのEVを巡る状況や政策が不確実になっています。

逆にいえば、カナダと貿易戦争する火種がほぼない日本勢にとってはチャンスかもしれませんし、

いずれ来る日本でのEV補助金廃止に対して教訓があるかもしれません。

今後の状況に注目ですね。


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