2026年のEV普及は、やっぱり高市総理次第?

EV補助金の大幅アップ、EV用充電器の増加、新しいEVの投入など、最近、明るい話題の多いEVの世界。
一方で、ガソリン車に有利な税制改正も進み、今年のEV普及が実際にどの程度進むかの見通しは不確実です。
さらに、EV政策・自動車政策以外の、ある不確定要因で今後のEV普及は左右されます。
それは、「今年、破壊的な円安が起きるかどうか」「政府や企業がどのように対応するか」というもの。
この記事では、2026年の日本のEV普及について予想・解説します。
2025年のEV普及を振り返る
2025年のEV普及は「嵐の前の静けさ」だ、と私が予想したのは、2025年1月1日のこと。
2025年の日本・世界では、爆発的なEV普及がまず起こり得ない一方で、
新しいEVの発表などによるEVへの関心の高まり、
そして、世界ではEV補助金見直し、日本ではガソリン税制の決着が行われるだろうと。
その予想は大体当たっていた、と甘めに自己評価しているのですが、
想定外だったことがあったとすれば、高市政権の成立と自動車税制・補助金の再編です。
これは2026年のEV普及にダイレクトに影響を与えます。
結局、大幅増額に落ち着いたEV補助金
「(経済安全保障重視の)高市政権が成立したことでEV補助金が廃止されるのではないか?」
そんな噂も飛び交った昨年のEV業界。
「さすがに廃止はしないだろ」という記事をこのサイトで出して、実際に補助金は存続したのですが、
蓋を開けてみれば、補助金額がむしろ大幅に拡充されていました。
最大90万円だった補助金は130万円と1.5倍近くに。
燃料電池車は下げられた一方で、プラグインハイブリッド車も増額されました。

具体的な車種ごとの補助金額はこちらに書いてあるのですが(EV政策・補助金まとめではまだ更新作業が終わっていません)、
トヨタの電動SUV、BZ4Xへの補助金は130万円、つまり実質350万円から買えます。航続距離が500km越えでこの価格です。
同等の性能を持つ新型リーフも129万円の補助金が出て実質389万円から(さらに廉価グレードも発表予定)。
スズキのEビターラにいたっては実質272万円からと、海外勢並みの安さです(実際海外で作ってますしね)。
東京都などでは、国の補助金に加えて自治体の補助金があるので、さらにお得に買うことができます。
環境性能割廃止 / ガソリン暫定税率廃止の罠
ただし、EV補助金を増額したのは、高市政権が環境問題解決に積極的であるからではありません。
よく言えば自動車産業振興、悪く言えば自動車産業へのバラマキに積極的であるだけです。
その証拠に、高市政権は、環境性能割とガソリン暫定税率の廃止を決めています。
環境性能割は燃費が悪い車を買う時にかかる税金のことで、
ガソリン暫定税率はガソリンにかかる税金のこと
これらが廃止されるということは、単に国と地方の税収が減ることに加えて、
EVやハイブリッド車などの燃費の良いクルマを買う意欲も下がるということも意味しています。

だから、地方自治体も総務省も環境省も、ガソリン減税・環境性能割廃止に実は消極的だったのですが、
自動車産業と、政治(≒民意)は廃止に動き、結果的に廃止が決まりました。
これがどの程度EV普及に負の影響を与えるかが注目されます。
もしもガソリン価格が250円 / Lになったら
逆に言えば、今の政府は、実施しやすい自動車減税をやりつくしてしまったとも言えます。
これ以上の自動車への減税ももちろん可能ですが、「暫定」税率の廃止などの立派な建前がない分、「バラマキ」の誹りを受けやすくなってしまいます。
その点で、今後日本が急激な円安に襲われガソリン価格が上がったときに政府が切れる、ちょうど良いカードが尽きている状態だとも言えます。

現在、日本の財政に対する投資家の不安などから、長期国債が暴落しています。
もっとも日本の対GDP比国債が膨大なのは今に始まったことではないですが、
問題は「日本政府に財政問題に対処する意思がある」と投資家に信じてもらえるか。
高市政権も含め、積極財政を掲げる政治的動きが強い中で、その信頼が、今、揺らぎつつあるのです。
そして、政府への信頼が揺らぐと、通貨としての「円」の信頼も揺らぎ、円安要因になります。
円安が進むとガソリン価格が上がります。
そもそも数年前からガソリン価格が上がったのは、何もその時期にガソリンに増税したからではなく、ウクライナ戦争による石油価格の上昇、そして、円安が進んだからなのですから。
そのとき、日本政府はどうするのでしょうか?
また、ガソリン補助金を再開するのでしょうか?
しかし、円安が進む度にガソリン補助金をかけるなら、財政はさらに悪化することに
それは実際の財政への影響以上に「日本は物価が上がったらバラマキでもっと財政を悪化させようとするのだな」と投資家に思われることが痛いです。
すると、以下のような悪循環に陥る懸念があります
- 投資家が日本の財政の未来に不安になる
- 円安になる
- 物価が上がる(ガソリンなど)
- 物価対策という名のバラマキ(ガソリン補助金など)
- 投資家がさらに不安になる

海外の市場の変化など偶発的な要因でこの悪循環が断ち切られることもあるでしょうが、
そうでなければ、どこかでガソリン価格上昇などの円安物価上昇を正面から受け入れる必要が出てきます。
そのときは、ガソリン車の市場がめちゃくちゃになったり、ガソリンスタンドが潰れたりすることが予想されます。それは、ほとんどの人にとって、もちろん自分にとっても非常に厳しいことになります。
しかし、皮肉にも、それは日本のEV普及にとって、ここ数年で最大の「チャンス」です。
円安でEVはどうなる?
もちろん、円安が進めばEVの価格も高くなります。
また、EV補助金も、もし急激なインフレが進めば「はした金」になるのかもしれません。
一方で、日本で作ったガソリン車が普通に買えるとも考えにくいです。
劇的な円安時にはむしろ車を海外に積極的に輸出した方が儲かるでしょうし、それが貿易黒字を稼ぎ、日本の税制の信用を立て直すことにも繋がるからです。
なので、日本人は中国製激安EVに乗り、ハイブリッド車は海外で売りさばく,
というのが現実解になってしまう日が来るのかもしれません。
というと、妄想が激しい気もしますが、
現在、EV充電スポット数がガソリンスタンドを超えていて、EV充電の課題はかなり改善されています(逆に言えばガソリンスタンドは静かに減っています)。
EVの性能自体も向上し続けています。
日本の自動車産業を揺るがす「何らかの事件」が起きるとEVが劇的に普及する、普及「してしまう」、
そんな土壌が着々とできているような気がしてなりません。もっともそれが日本にとって良いことかは別問題ですが。
もちろん、これは円安がどの程度の強さでどの程度続くのか、
自動車メーカーと政府がどんな意思決定を下すのか次第で、何が起こるかは全然変わると思います。
その点で、高市総理が、円安問題をどのように処理するのか、
円安が進んだ場合に、どのようなかじ取りをするのかによって、結果的に日本のEV普及は大きく左右されるのです。
もっとも、政局次第では高市総理が辞めざるを得なくなり、次の総理の手腕に託されるということもあるでしょうが。
