「日本で車離れは進んでいない」という話

車の話題ほど、印象論がまかり通るテーマはなかなかありません。
例えば「日本は車への税金が世界一高い」というのは真っ赤な嘘。
むしろ、他の先進国より安いほどです(→記事)。
もちろん、嘘はこれだけではありません。
巷で言われる「日本で車離れが進んでいる」という話。
自分でデータを分析したところ、
一人あたり車保有台数は、減るどころか、増加トレンドにあることが分かりました。
なぜこうなっているのか、
なぜほとんどの人が「騙されて」いるのか、解説します。
微増を続ける一人あたり車保有台数
日本の一人あたり車保有台数は、既存の図がないため、自分で作りました。
といっても、やることは簡単。
自動車検査登録情報協会から、自動車(乗用車:軽自動車含む)の保有台数を入手
人口は、World Bank「Population, Total for Japan」から入手。
あとは、保有台数を人口で割るだけです。

グラフを見れば分かる通り、一人あたり車保有台数は継続的に増えています。
2000年では、一人あたり0.4台前後でしたが、2024年では一人あたり0.5台の大台に到達。
都会に住んでいるなどの事情で車に一切乗らないも多い中で、2人に一台車がある、というのは改めてすごいですね。
「世帯あたり車保有台数」に騙されるな?
にもかかわらず、なぜ車離れが進んでいるという話になっているのか?
もう一つの理由は、若者の「免許保有率」が減少しているためでしょう。
ただし、年齢別の車保有率の推移に関する信頼できる統計はないので、実際に若者の車離れが進んでいるかはよくわかりません。
もっとも、いまや若者は日本のマイノリティなので、若者が車を持たなくても、日本全体の車離れにほとんど影響はないのですが。
もう一つの理由は「世帯あたり車保有台数」は減少しているからでしょう
ピークでは、平均で、世帯あたり1台を超えていましたが、今は微減トレンドにあり、ぴったり1台くらいです(1.009台)

さらに進む地方/高齢者の車依存
世帯当たり保有率が減少しているのに、なぜ一人あたり保有率が上昇するのか?
主な理由は、各世帯の人数が減っているからでしょう。
特に高齢者において、一人世帯や夫婦のみの世帯が多く、三世代世帯(孫、親、祖父母が同居)は急激に減少しています。

「一家に一台」なければ暮らせないような地方で、核家族化が進めば、車の量は増えることになります。
一家に一台で、世帯人数が少ないなら、車をより占有できるようになるので、便利と言えば便利かもしれません。
ただし、そのような状況では、高齢者だからと言って、子供に運転を任せて免許を返納するようなこともできません。
どれだけ健康に不安があっても「運転し続けるしかない」ため、交通事故のリスクが上がる可能性があります。
車依存の社会的費用は誰が払うのか?
さらに言えば、今は、そもそも車なしで暮らせない地域に未来があるのか、を真剣に考えるべき時代です。
日本の道路の維持を担っているのは地方自治体。
しかし、車から徴収される税金だけでは維持費用を賄うことができません。
さらに、ガソリン暫定税率がなくなり、環境性能割も廃止されたことで、車からの税収は次々に減っています。

鉄道は、線路を維持する費用を原則民間が負担する一方で、車は道路を維持する費用を原則政府が負担する。しかも車からの税収では費用を賄えない。
これは持続可能ではありません。
さらに、公共交通と比べて、スポロール化を促しやすく、人がバラバラな場所に住むようになりがちな車社会では、水道など、道路以外のインフラを維持することも簡単にはいきません。
だからこそコンパクトシティ化( ≒ 公共交通の復活)が目指されているわけです。
まとめ
日本において、さも社会問題かのように語られる「車離れ」。
しかし、データを見てみると、一人あたり車の保有台数は増え続けている現実、
そして道路の維持が危ぶまれる現実があります。
ある意味で、車への過度な依存の方が問題なのかもしれません。
