目指せ EV日本一!? 国より面白い地方自治体のEV政策
日本でも少しずつ普及しつつあるEV(電気自動車)。
普及を陰ながら支えているのは、地方自治体独自のEV政策です。
国よりも地方自治体の政策の方が革新的 なこともしばしば。
この記事では 47都道府県のEV政策を調べあげた筆者 が「これは面白い!」と思った政策をまとめます。
なお、お住まいの県のEV政策について知りたい人は、こちらの一覧 から探してください。
1.東京都:手厚く手広い「王者」の政策
自治体のEV政策を語る上で、絶対に外せないのは東京都。
そのEV政策は、国より手厚く、国より手広いといっても過言ではありません。
例えば、都独自のEV補助金は50万円前後。これは国の補助金の額に匹敵する額であり、
「太陽光パネルを家に設置している」などの条件が整うと、国の補助金さえ上回る額になります。
このような大盤振る舞いのおかげで、東京都は今日本で一番EVが普及していますが、
補助金だけで普及を進めるのには課題があります。
それは東京都では一軒家に住む人が少数派ため、自宅でのEV充電が難しいということ。
一軒家ではEV充電器を設置するのが容易で、EVを自宅充電して便利に使えますが、
集合住宅では導入の決定を下すのが難しいのです。
その課題に対応するため、東京都は多様な政策を展開しています。
例えば、
- 充電スタンド設置への独自補助金
- 一軒家・集合住宅へのEV充電器設置への補助金
- 無料相談会の開催やマンションアドバイザー制度の導入
- 新築マンション等への充電器設置義務化
特に、最後の充電器設置義務化は、
「新築建物にはじめから充電器を設置してしまえば、合意形成の苦労も省け、工事も安くなるのでは?」
という大胆な発想に基づいた政策で、日本では初めての政策です。
2.福井県:若者のEV購入を集中的に支援
多くの自治体には、東京都のような潤沢な予算はありません。
東京都のような手厚い補助金はなかなか難しいでしょう。
しかし、EVを購入する人全員ではなく、
一部の人々を集中的に支援すれば、東京都に匹敵する補助金も可能です。
それを実際に行っているのが福井県です。
福井県では、新車のEV購入に一台10万円の薄く広い補助金を用意していますが、
同時に、29歳以下に特化した狭く厚いEV補助金(一台40万円)を用意しています。
おそらく、所得が低い若者層にEVを手ごろにするための措置だと思われますが、
EV政策の逆進性(EVを買う高所得層に税金で補助金が交付される)を緩和する機能もあるでしょう。
「太陽光発電を設置しているかどうか」で補助金が決まるケースは珍しくありませんが、
その人の属性で補助金額が決まるのは日本ではかなり珍しい政策です。
3.岡山県:EVで産業を守れ
「EV化の波に日本がどう対応するか」は日本の命運を分ける課題でしょう。
自動車産業を抱える県や市町村もそれは同じ。
水面下でEV化に対応するための動きを進めています(静岡県、広島県、福岡県等)
その中で岡山県が特徴的なのは「県内で作られたEVを積極的に支援していること」
一部の市町村では「軽EV」のみが補助金の対象になったり、三菱車であれば補助金を受けやすかったりします(*岡山では三菱の軽EVが製造されている)
その他にも様々なEV政策を進めていますが、
EV政策を推進している背景を知事は次のように語っていました。
県内にはEVを生産している三菱自動車工業水島製作所や、多くの自動車部品サプライヤーが集積していることから、EVシフトによって大きな影響を受けます。
こうしたことを背景に、岡山県ではEVシフトをチャンスととらえて、EVで必要とされるモーターやバッテリーといった新たな部品を製造することや、充電環境の整備への挑戦を行っていきたいと考えています。
EVという新分野で「先行者利益」が約束されているわけではありません。しかし、このようなピンチをチャンスに変えるには、一日も早く変化に対応しておくことが産業構造の変化に対するリスクヘッジになると考えています。
事業構想オンライン での知事のインタビュー
このような政策が最終的にどのような結果に繋がるのか、今後に目が離せません。
4.群馬県:公用車EVはシェアしよう
日本各地の自治体が公用車として、電気自動車(EV)を導入しています。
公用車EVをさらに活かすため、一部の自治体では、休日に公用車EVを貸し出しています。
群馬県もその一つ。
20台のEVをカーシェアリングサービスを通じて、土日・休日等に県民に貸しています。
車種は群馬県との繋がりが深いスバルのEV、ソルテラ
ソルテラは航続距離が長く(WLTCで542km)、県内利用が前提のこのサービスでは、航続距離にはまず困らないでしょう。
EV購入を検討している人は「まず公用車のEVを借りてみる」というのも良いかもしれません。
5.神戸市:EVで停電を防げるか?
そもそも、自治体がEVの普及を後押ししているのは「EVが環境に良いから」だけではありません。
「動く蓄電池」でもあるEVは、災害時の電力源として役割が期待されています。
「災害時に避難所の電力供給に協力すること」を補助金の条件にしている自治体もあるほど。
しかし、課題もあります。
- V2H(EVから建物に、建物からEVに充電する設備)の設置費用が高額であること
- 停電が長期化した際に、EVに貯めている電気だけでは足りないこと
そこで、神戸市は、独自の仕組みでEVを防災に役立てようとしています。
具体的には、災害時にEVから避難所(学校)に電気を供給する仕組みを整えています。
通常のV2Hと異なり、EVから施設への充電に特化した設備にすることで、工事を安く抑えていて、
令和5年度末までに約230の避難所(学校)への導入を予定しているそうです。
しかし、EVにためてある電気が尽きてしまえば、また避難所は停電してしまいます
それを解決するのがごみ焼却による自立発電が可能な、港島クリーンセンター(港島CC)です。
港島CCでEVを充電し、そのEVで避難所に電気を供給、不足すればまた充電に向かう。
この「災害時給電サイクル」によって、避難所で最低限の電気が使える状態を維持するのが神戸市の計画です。
まとめ:日本のEV政策は地方から?
ここまで読んだ方は分かるように、
EV普及のために地方自治体ができる政策は多岐にわたります。
今後の地方自治体でどのように普及するのか?どのような政策が出てくるのか、注目ですね。
各自治体のEV政策は以下でチェックできます!