EV普及に「本気」なのはどの県か?地方自治体のEV普及戦略を解説
日本でも少しずつ普及しつつあるEV(電気自動車)。
普及を陰ながら支えているのは、地方自治体独自のEV政策です。
では、特にどの都道府県が野心的なEV普及を目指しているのでしょうか?
そして、自治体は目標実現のためにどのような施策を実行しているのでしょうか?
この記事では 47都道府県のEV政策を調べあげた筆者 が、自治体のEV普及目標についてまとめます。
*お住まいの都道府県や市町村のEV政策について知りたい人は、こちらの一覧 から探してください。
*各都道府県の今のEV普及率を知りたい人は「地方がEV普及で先行している」は嘘。各県の本当のEV普及率を解説 を読んでください。
EV普及目標を掲げている自治体は?
独自のEV政策(補助金など)を実行している自治体は数多くあれど、
実際に、具体的な目標を掲げてEV普及を推進している自治体は多くはありません。
以下に、目標を掲げている都道府県の一覧とその目標の高さについてまとめます(各都道府県名をクリックすると政策の詳細を見ることができます)。
新車EV率目標(2030年の新車乗用車に占めるEVの割合)
脱ガソリン車目標(ハイブリッド車とEVが2030年の新車乗用車に占める割合など)
EV普及目標(2030年に保有されている乗用車に占めるEVの割合)
一目で分かる通り、最も野心的な目標を掲げているのは東京都であり、大阪・愛知などがそれに続くような形になっています。
では、東京都はどのようにEV普及を進めようとしているのでしょうか?
東京都のEV普及戦略
東京都は、2030年の新車の2台に1台をEVにすることを目指しています。
それを実現するため、EVをより手ごろに、より便利にするために
多額の予算を背景に、「EVの普及」と「充電インフラ」の普及を同時に強力に推進しています。
具体的には......
- 日本で一番潤沢なEV購入補助金を用意
- EVが便利に使えるように、自宅での充電器設置を補助
- 公共用EV充電器に補助金をかけて、外出先で充電できるEV充電器の普及を後押し
- 補助金だけでなく、一部の新築建物においては充電器設置を義務化も始める予定
詳しくはこちらを参照してください。
充電器の普及目標も意外に重要!?
EVの普及目標を掲げていない都道府県でも、EV用の充電器の普及に関しては目標を掲げていることが多いです。
EV用の充電器の普及はEVの利便性に直結するので、これは車を買おうとしている人にも重要な政策でしょう。
相場としては、EV用の充電器の数を現在の2~4倍に増やすことが目指されています。各県のEV普及政策は県内をクリックしてください。
公共用充電器普及目標(外で使えるEV充電器の普及目標)
- 東京都(2025年に5000基:24年11月現在3699口)
- 福島県(2030年に2500基:現在732口)
- 栃木県(2030年に2500基:現在964口)
- 長野県(2030年に3900基:現在1487口)
- 徳島県(2030年に2000口:現在237口)
- 岡山県(2030年に2300口:目標ではなく目安:現在629口)
急速充電器普及目標(外で使える急速充電器の普及目標)
- 東京都(2030年に1000基:現在897口)
- 福島県(2030年600基:現在307口)
- 栃木県(2030年500基:現在265口)
- 長野県(2030年700基:現在343口)
- 徳島県(2030年に200口:現在82口)
- 岡山県(2030年に500口:目標ではなく目安:現在240口)
では、具体的に自治体はどのようにこの目標を実現しようとしているのでしょうか?
特に、東京都のような莫大な予算は使うことができない場合に、どのように進めているのでしょうか?
その典型例として栃木県のEV充電器普及政策を紹介します。
栃木県のEV普及戦略
県と市町村の役割分担
まず、栃木県のEV政策の特徴は、「県と市町村の役割分担」でしょう。
栃木県は EV用充電器普及 を中心に取り組む一方、県内の大半の市町村は EV購入への直接補助金(一台10万円前後)を用意しています。
EVと充電器は、片方だけ普及することはなかなか難しく、両方を普及させる必要があります。
そのため、栃木県では、このような形で役割分担をしつつ、充電器とEVを両方を増やす政策を実行しているのです
わざわざ県と市町村で分担しているのは、県が全てのEV政策を行おうとすると予算額が大きくなりすぎるためでしょう(このような分担は他にも多くの県で見られます)
「空白地帯」と「道の駅」への集中支援
そして、栃木県は予算を効率的に使うため「空白地域」と「道の駅」での充電器設置を集中的に支援しています。
空白地域とは、その名の通り、充電器がない地域のことで、具体的には公道上道のり15km以内に急速の公共用充電設備がない地域を指し、
空白地域をなくしていくことを栃木県は目指しています。
また、多くの人が訪れる交通拠点である道の駅へのEV充電に設置されると、EVの利便性は高まるので、道の駅へのEV充電器の普及も栃木県は優先しています。
これらの場所に充電器を設置する場合には、国の補助金に加えて、最大200万円の補助金が県から支給されます(詳しくはこちら)。
EV充電器を防災対策に
さらに、EV充電器の設置を防災に役立てるために、
栃木県の充電器設置の補助金の対象になるには、栃木県災害時協力車登録制度への協力が条件になります。
これは、災害時に、「動く蓄電池」としてEVを避難所への電力供給などに使うための制度です。
具体的にはEVから電気を供給する外部給電器を通じて、避難所にいち早く最低限の電気を供給するのです(照明やスマホの充電、小さな家電など。エアコンは体育館の規模では困難)
しかし、EVへ貯めてある電気も充電できなければすぐなくなってしまいます。
そこで栃木県は、災害時にもEVを充電できる地域電源拠点の整備 にも力を入れています。
太陽光パネルで発電した電気を、停電時にも使える自立型パワコンと急速充電器を通じて、EVに充電できれば、災害時でもEVを充電でき、避難所等に電気を運ぶことができるのです。
ただし、必要な設備は高額なので、栃木県は、国の補助金に加えて、県の補助金でこれを推進しています(詳しくはこちら)。
このように、栃木県は、少ない予算を充電器が必要な場所へ集中的に投資し、さらに防災に役立てるための工夫をしつつ、EV用の充電器の普及を後押ししています。
他の県もディテールはもちろん異なりますが、おおむねこのような戦略が多いでしょう。
まとめ
ここまで読んだ方は分かるように、
EV普及のために地方自治体ができる政策は多岐にわたります。
今回紹介しなかった県や、目標は掲げていない県でも、具体的な政策(補助金など)を実行しているところは数多くあります。
それらの政策は以下のリンクからチェックできます!
市町村を含めた日本の自治体のEV政策を、都道府県ごとにまとめたページになっています。